五三短律句事始め

はじめに

回光(えこう) 返照(へんしょう)の 退歩

 これは、道元の『普勧坐禅儀(ふかんざぜんぎ)』の序分に出てくる言葉です。坐禅のことを端的に謂(い)ったものです。日頃、私たちは、外にばかり目を向けてあくせく動き回っています。それをいったん止めて、何もせずにただ坐り、目を内に向け返して自分自身を見つめろ、ということです。それに続く言葉は、「を学すべし」です。一心に坐禅(回光返照の退歩)に励みなさい。そうすれば、「身心(しんじん)自然(じねん)に脱落して、本来の面目(めんもく)現前せん」と結ばれます。「身心脱落」は、悟りの体験を表した道元独自の言葉です。悟りが開かれれば、本来の面目、すなわち真の自己(仏性)が自ずから顕われる、というのです。

 「一隅を照らす」には、坐禅が必須なのです。