これは、釈迦の遺言といわれる『仏遺教経典(ぶっゆいきょうぎょう)』「八大人覚(はちだいにんがく)」の冒頭を飾る「小欲・知足」の教えです。
多欲の人は、自分の利益ばかりを追い求めているので、その分苦悩も多い。それに比べて、小欲の人は、無求無欲なので、多欲の人のように患うことがありません。小欲には実に多くの功徳があるので、ただちにそれを身につけなさい、と説かれています。小欲は涅槃なのです。
また、知足の人は、多くの苦しみから解放され、安らかな気持ちで暮らすことができます。たとえば、足るを知る人は、地上に寝起きして暮らしても、そこが安楽の地であるのに、足るを知らない人は、豪華な宮殿に住んでも、まだ満ち足りることがありません。ですから、足るを知らない人は裕福に見えても貧しく、足るを知る人は暮らしは貧しくとも、豊かな気持ちでいることができるのです。
かいつまんで言うとこういう教えです。富や権力、地位や名誉など人間の欲望には限りがありません。そんなものはただ虚しいだけです。
これは逆説的な真理です。