五三短律句事始め

はじめに

咲いた 野に花が そっと

 私は、これ見よがしに咲き誇っているバラ園やチューリップ園の花を見るのはあまり好きではありません。庭師の人が丹精こめて手入れされているに違いありませんが、どこか人工的で、無理矢理咲かされているようで、かわいそうなのです。

 それに比べて、道端や庭先にそっと咲いている名も知らない小さな草花を見るのが好きです。毎年春になると、私が経営している学園の園庭の片隅に白や黄色、薄紫の小さな草花が慎み深く咲きます。気にとめる人は誰もいません。

 でも、誰が植えるのでもないのに、毎年春になると同じ場所で可憐に咲いてくれる草花が、自分を重ねて見るせいか、愛(いと)おしくてなりません。大自然の神秘、生命の偉大さに感動すら覚えます。

 

庭の 草花が けなげ

 

 「たった一輪のスミレのために、日が昇り、風が吹き、雨が降る」という言葉があります。一本の草花が咲くのも大自然の営みの顕れなのです。このことを知れば、人はおのずから謙虚になれます。謙虚がなによりの美徳です。

 私もかくありたいと願っています。