禅マインドフル・サポート実践法について

序分(じょぶん) マインドフルネス瞑想法

(2)臨床マインドフルネスの広がり

 J. カバットジンは 10 年間に及ぶ豊富な治療体験をもとにして 1990 年に『マインドフルネスストレス低減法』を上梓した。これを基本型として、認知療法の大家である J.D. ティーズデールを中心に Z.V. シーガルらがうつの再発予防のための新しいアプローチを開発し、それを一冊の本にまとめて『マインドフルネス認知療法』を出版したのは 2002 年であった。これが今世紀における爆発的なマインドフルネス・ブームの火付け役を果たしたのである。シーガルらの心理療法は、東洋の瞑想実践と西洋の認知療法を結びつけた最初の試みである。日本語の訳本が出版されたのは、くしくも同年の 2007 年のことであった。

 今やこのシンプルな方法は、精神医学界や心理療法界のみならず、教育・福祉、あるいは企業領域における世間一般のセルフヘルプやメンタルヘルスの主流になっている。その適用範囲は、企業の職員研修、あるいは母親の育児ストレスや育児不安の軽減などに対する育児支援、高齢者の人生における未解決の問題の悩み(許しの問題)とか家族介護者の介護疲労、専門介護職のストレス解消、生活の質の向上等々にまで拡大され、その効果が実証されている。

 アメリカにおいて高齢者福祉の領域にマインドフルネス認知療法を適用した先駆者はフォーク阿部まり子である。残念ながら、マインドフルネス瞑想の部分的適用はあるにせよ、わが国の福祉領域において本格的に実践された事例はいまだないし、ましてや障害者福祉において適用された例を浅学にしてまだ知らない。