人生ご破算で願いましては

第三章 歩行(ほぎょう)が人間を仏にする

 人類の起源は、およそ四~五〇〇万年前、「変なサルが直立二足歩行をはじめた」ことによるとされています。歩行(ほこう)がサルを人間にしたのです。その理由については、サバンナ説(樹上から下りて草原で生活するようになったこと)、アクア説(水中活動に適応した生活を行ったこと)、前述のネオテニィー説(人間は祖先となるサルの幼形成熟によって生まれたという説)などいろいろの仮説が提唱されていますが、未だ定説はありません。しかし、直立二足歩行が類人猿と区別するもっとも重要な人間の根本的な特徴の一つであり、人類誕生の決定的な契機となったという点では大方の意見が一致しています。直立二足歩行によって、前足(手)が自由に使えるようになり、脳が進化することで、道具の作成、火の使用、言語能力の獲得が可能になったと考えられています。