どんな仕事もそうであるが、特に福祉の仕事は何の変哲もない同じことのくり返しである。「こんな無益なことのくり返しで、いったい自分は何をしているのだろうか」とつい働きがいを見失って虚無感に襲われることもあろう。私が現役のとき、学生に質問されたことがあった。「先生、生きがいはどうして見つけたらいいのですか?」私はこう答えた。「何でもいいから、やってみろ。ただし楽しくなるまでやりつづけろ」。学生は生きがいがまるで自分の外にでもあるかのように思い違いしている。そういったものは、現に今自分がやっている行為、日々の生活の中にしかない。「人生において一番大切なものは何か?」それは「今自分がやっている行為」である。
白隠禅師の『坐禅和讃』に「衆生(しゅじょう)近きを知らずして、遠く求むるはかなさよ。譬えば水の中に居て、渇(かつ)を叫ぶが如くなり」とある。蛇足ではあるが、このことを見事に表現した三冊の本、エンデの『モモ』とカミュの『シーシュポスの神話』とメーテルリンクの『青い鳥』の肝心の箇所を紹介して終わりにしよう。